消えた「ものづくり職人」
この20年間で、数百万人の「ものづくり職人」が日本から消えたと言われています。職人技という言葉は、テクノロジーの進歩によりロボットに使われる時代が来るかもしれません。佐原で曳き廻しの山車を初めて見た時、東の関心は4トンの重さを支える、かじ取りの仕掛けのない半間(山車の車輪)と、それを製作した職人にありました。「下手なもの作ったら人が死ぬ。だから下手なものは作れない。」実際に佐原の半間を製作した木工所の職人を訪れ聞いた言葉は、匠の技を学習した機械からは聞けないものでした。
高さ1.8mの「デッカ・ハンマ・タイヤ」
東はこれまでに、各地でのフィールドワークを元に、その地域で捨てられた家庭内放置自転車を使い作品を制作し、もう一度それらに命を吹き込むことで大量廃棄という問題を浮き彫りにすると同時に、大量生産の陰で密かに消えていくものづくりの現場に目を向けてきました。
本展では、ひとりの木工職人が営む工場に東が通い協働制作した、高さ1.8mの「デッカ・ハンマ・タイヤ」を展示します。完成形は二輪となる予定の本作は、子供の力でも回転させることが可能となり、その異様なスケール感と視覚のイメージがもたらす矛盾は、鑑賞者の目を見えていなかったものへと向けさせます。